放射線源交換時被ばく事故レポート#6
悪性腫瘍の治療における放射線治療の位置づけと琉大病院の役割について
今日、悪性腫瘍の治療において、放射線治療は手術と並んで重要な位置にあります。
放射線治療は末期癌の患者さんの痛みなどの症状を和らげるための対症的治療としてのみならず、近年では、治癒をめざした「集学的治療」のひとつとしての役割が拡大してきています。
ひと昔前は、様々な副作用、後遺症が数多くでていた時代もありましたが、最近では、装置・技術の進歩により、副作用を最小限におさえつつ、治療効果を最大限に引き出すことが可能になりつつあります。
放射線治療は、大きく分けて、ライナック装置による外部照射と、今回事故のあったラルス装置等を用いた密封小線源治療(以下RALS治療)があります。
後者は特に子宮頚癌の根治的治療には欠かせないものです。近年では、早期の食道癌に対してもRALS治療の適応が広がってきています。
沖縄県内では、現在琉大病院を含めて5施設で放射線治療が行われていますが、このRALS治療が行えるのは、沖縄県内では現在琉大病院だけです。琉大病院では年間約400人の患者さんがのべ1万回以上の放射線治療をうけていらっしゃいますが、そのうちRALS治療は約40-50人の子宮頚癌の患者さんに対しのべ約150回行われています。具体例を示しますと、子宮頚癌の患者さんのRALS治療による5年生存率(根治率)は、1期:90%、2期:73%、3期:56%であり( 1994-5年、日本癌治療学会誌に発表) 、多くの患者さんがこの治療の恩恵をうけていらっしゃます。
以上のように、琉大病院におけるRALS治療は、沖縄県全体に対して、大きな使命と責任を担っています。我々は、今回の事故が県民の皆様に与えた不安とともに、なりよりもこの治療を必要としている患者さんに多大なご迷惑をおかけしたことを真摯にうけとめています、今後このような事故が二度と起きないように、万全な安全管理を進めていきます。
放射線部部長
放射線医学講座教授
澤田 敏